京都市下京区の鉄輪の井戸

京都市下京区の鉄輪の井戸

京都市下京区の鉄輪の井戸

京都の下京区には命婦稲荷社(みょうぶいなりしゃ)という神社があります。
この神社はどこにあるかというと、なんと住宅街の細い路地の奥にあります。
民家と民家の間の狭い通路を通らないと入ることができません。
私有地のようなので、中に入る場合は騒ぐことなく静かに行かれることをおすすめします。
通路を進むと赤い鳥居が見えてきます。
そこが命婦稲荷社なのですが、その敷地内には、悪縁を切るご利益があるという鉄輪の井戸(かなわのいど)があります。

 

この鉄輪の井戸には恐ろしいエピソードがあります。
昔、この辺りに住んでいた女が、自分を捨てた夫をとても恨んでいました。
その女は、貴船神社で丑の刻参りをします。
丑の刻参りとは、御神木に藁人形を釘で打ち込む、恐ろしい呪いの儀式です。
夫を藁人形に見立て、三本足の五徳である鉄輪を頭に乗せ、それに三つの火を灯して呪いました。
後妻をめとった夫を呪い殺したいという女の気持ちはとても強く、毎晩悪夢を見るようになった夫は、安倍晴明の祈祷を受けることになりました。
そのおかげで夫は難を逃れ、鬼の姿をした女はこの井戸付近で息耐えたと言われています。
女がこの井戸に身を投げたという言い伝えもあるようです。

 

井戸の水を、縁を切りたい相手に飲ませると縁が切れるといいます。
この鉄輪の井戸は、縁切りの穴場のスポットであるようです。
昔、この辺りは鉄輪町と呼ばれていたそうで、縁切りの効果がある場所として有名だったようです。
強すぎる人の念は、恐ろしい出来事を招くこともあるため、注意が必要ですね。

 

現在は井戸の水は枯れていて、縁を切りたい相手に飲ませるといったことはできませんが、自分が持ってきた水をお供えしてから持ち帰るとご利益が得られるようです。

 

京都は、ミステリーが大好きな人にとても人気があります。
観光で京都を訪れたときなどに、ふと思い出してみて下さい。
縁を切りたいなと思う人がいたら、水を持って鉄輪の井戸に行ってみるのもよいでしょう。
家庭円満や商売繁盛のご利益がある命婦稲荷社も是非お参りして下さい。
かなり穴場のスポットだと思います。
住宅街の私有地の中にありますので、くれぐれも静かに、迷惑のないように参拝して下さいね。

京都市北区の深泥池

京都は旅をするのに最適な場所です。
見どころがたくさんあって、四季折々さまざまな表情を見せてくれる、とても魅力的な街です。
有名な観光名所がたくさんありますが、そういった場所とは違って、人はそんなに多くはないけれど、でも行ってみるとよいという場所もまたたくさんあります。
一方で、不思議なスポットも数多くあり、ミステリーが大好きだという人にとっても京都はとても魅力的な場所だと思います。

 

京都の北区に、深泥池という池があります。
読み方は「みどろがいけ」で、この読み方だけでもなんだか不気味な雰囲気が漂ってきます。
この池は、この世とあの世の境目だともいわれています。
どうやら鬼が出入りする穴があるのだとか。
池というよりは沼地のようで、このような伝説が似合う、どんよりとした雰囲気が漂っています。
観光で、有名な場所に行くのもよいですが、このような穴場のスポットに行ってみるのもまたよいのではないでしょうか。

 

京都には、タクシーにまつわる有名な怪談話があります。
その舞台がなんとこの深泥池なのです。
タクシーに乗ったはずの女性のお客さんが、いつの間にか姿を消し、座っていたはずのシートを見てみると濡れていたという話で、結構有名な話のようです。
ぞっとする、とても怖い話ですね。
タクシーの運転手さんの間でも有名なようで、夜、女性が深泥池までと行ってタクシーに乗ろうとする場合は乗せなくていいという暗黙の了解のようなものがあるようです。
乗車拒否が本当かどうかはわからないですが、なんともミステリアスな話ですね。

 

そんな怖い話がつきまとう深泥池ですが、その歴史はとても長く、なんと氷河期から存在しているそうです。
日本最古の池とも言われています。
それだけ歴史があるのなら、なにかと言い伝えが残っているのも不思議ではありませんね。
見た感じもどこかさびしげで、確かになにかがありそうな雰囲気です。

 

深泥池は、怖いだけではなく、国の天然記念物に指定されている、希少な生物がいる貴重な池でもあります。
マガモや鵜など、さまざまな水鳥達が水面を優雅に泳いでいたりもします。
いろいろな面を持つ深泥池、京都に行かれたときは、一度足を運んでみるのもよいかもしれませんよ。

京都市右京区の化野念仏寺

京都の右京区には、嵯峨野と呼ばれる地域があります。
一般的に有名なのは嵐山でしょうか。
嵯峨野とは、その嵐山だけでなく、もっと広い地域をさすのですが、その嵯峨野よりも、もっと奥のほうの奥嵯峨野というところに、無数の石仏や石塔が並んだ小さな寺があります。

 

その小さな寺は、化野念仏寺といいます。
読み方は「あだしのねんぶつじ」で、観光で人気の嵐山から3キロほどの距離にあります。
京都の市街地の、にぎやかで華やかな雰囲気とは全く違う、静寂に包まれた厳かな雰囲気の場所で、観光における穴場のスポットでもあります。

 

あだし、という言葉には、はかない、とか、むなしいという意味があります。
奥嵯峨野は、昔は京都の風葬地で、お墓を建てる余裕のない庶民が、人との永遠の別れを悲しんだ場所なのです。
亡骸も野ざらしになっていて、それを憐れんだ平安時代の僧侶が、化野の地に寺を建てたそうです。
その僧侶とは、歴史的にも有名な、あの空海なのです。
化野念仏寺には、約8000体もの石仏や石塔が並んでいて、これらは昔化野で亡くなった人達のお墓なのです。

 

人生も人の心も無常だということ、そのさみしさやはかなさだけではなく、その無常さに趣きも感じられてこれもまたよいのだということなど、さまざまな思いを巡らせることができ、心を清められる場所でもあります。

 

毎年8月には、これらの無縁仏にロウソクを灯して供養する千灯供養が行われます。
京都には、有名な観光スポットがたくさんありますが、少しミステリーを感じつつ、静寂とともに昔の人々の想いを感じ、自らの人生を見つめるような観光もまたよいのではないでしょうか。
千灯供養の日に訪れるのもよいと思います。
オレンジ色の光がとても幻想的で、暖かさや優しさを感じることができます。
境内には水子地蔵もあり、水子供養も行われています。

 

有名なところに行くだけが観光ではありません。
嵐山方面に行く予定の方は少し足をのばして、是非化野念仏寺にも行ってみて下さい。
心を清めることができると思います。
日々、仕事や家事、子育てなどに追われて生活している人が多いと思いますが、人生とはなにか、を静かに見つめることができる最適の場所だと思いますよ。